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edit 田中 豊彦

LTI 漬けのディレクターが思う、LTI1.3 考。

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先般、とある LTI 勉強会セミナーに参加してきました。その会でまずはじめに語られたことは、 LTI に関する知識を得ようとしたときのネックになっているのは、やはり日本語の技術解説資料が存在しないため、英文の技術解説を読み込まなければいけないことであるということでした。私も英語は苦手なのでついついブラウザの翻訳ツールで和文にしながら読むのですが、翻訳しないでほしい固有の名称も一緒に翻訳されてしまうこともあり、英文と和文を交互に見比べながら四苦八苦しています。そういう学習コストが高い点もあり、 LTI を開発できるベンダーがまだ限られてしまっているのだと思います。日本での導入例が、海外の浸透度に比べるとまだまだ少ないのもそういう理由からなのでしょうか。

文部科学省が運営するテスト問題バンクツール MEXCBT (メクビット)システムに現在の推奨バージョンである LTI1.3 が採用されたことに加え、旧バージョンである LTI1.1 が2022年6月30日に 1EdTech のサポートがついに終了(※1)したこともあり、今後益々 LTI1.3 化の波は大きく広がっていくことが予想されます。既に、MEXCBT と時を同じくして複数の民間教育サービス会社が提供し始めた学習eポータルサービスや、その連携ツールとしてデジタル教科書や各種教材ツールなど、 LTI1.3 認証を標準仕様として備えたサービス同士のシェア争奪戦が水面下で始まっていることが予想されます。
※1 現在は LTI 1.3 およびその機能拡張規格である LTI Advantage のみが 1EdTech のサポートの対象となっています。

さて、そんな教育業界が熱く注視している LTI1.3 ですが、 LTI1.1 からどのような点がパワーアップしたのでしょうか。

LTI1.1 も、Platform から Tool への接続認証時に、接続してきているユーザー ID やコース ID 、教員か生徒かのロール情報などを受け渡しながら、SSO (シングル・サイン・オン)ができるという優れた技術規格でした。
ある意味、このままでも充分なのかな…とも思っていましたが、やはり LTI1.3 でのシステム開発を一度体験すると、頭の中で考えるシステム構成や目的実現への到達手法が LTI1.3 の便利な機能を使う前提へとシフトしてしまいます。

ここでざっくりと LTI1.3 を整理しますと、まずセキュリティの観点では、 OpenID と OAuth2.0 を組み合わせた OpenID Connect による認証・認可規格が採用されていますので、LTI1.1 時代よりも安全面が強化されています。規格の全体像としては、 Core LTI と呼ばれる土台となる認証・認可の仕様と、その Core LTI の実装を前提に上乗せ利用ができる LTI Advantage と呼ばれる具体的な機能拡張群の2軸に別けられます。

Core LTI はベースとなる認証・認可の規格であり、LTI1.1 からはできることが大きく増えたわけではない為、ここでの説明は割愛させていただきます。LTI1.3 の肝となる LTI Advantage ですが、「 NRPS 」「 DL 」「 AGS 」という略称を持つ3種の規格を取りまとめた総称になります。

・NRPS:Names and Role Provisioning Services
・DL:Deep Linking
・AGS:Assignment and Grade Services

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この LTI Advantage の3つの規格を使って実際にどんなことが実現できるのかを、イメージしやすいようにユースケース等も交えながら簡単にまとめましたので、よろしければご参考にしてください。

●Names and Role Provisioning Services( NRPS )
名前だけでなくロール(教師なのか学生なのかなど)も含めたユーザー情報をポータル役の Platform ( LMS など)から Tool (外部ツール)へと受け渡すことができます。これにより、教師ユーザにはA画面、学生ユーザの場合はB画面というようにロールによって、Platform から SSO ( LTI 接続)で遷移した時に Tool 側で表示する画面や機能を振り分けることができます。ちなみに、これらのことは LTI1.1 でも実現できていました。

●Deep Linking( DL )
Platform 上の任意の場所に対して、Tool 内の教材にダイレクトに遷移できる接続口が配置できるようになります。これにより、特定の授業Aで使用したい外部ツール内の教材Bを直接開くリンクを、Platform 上の授業Aの場所に配置することができます。外部ツールに遷移した後に目を皿のようにして目的の教材を探す必要がなくなりますので、学生は普段日常的に使っている LMS などの UI から、その授業で使う教材に迷うことなくワンクリックでたどり着けることになります。これは LTI1.1 にはなかった機能です。この規格を利用することで、見える景色がガラッと変わるであろうと考えています。

●Assignment and Grade Services( AGS )
AGS をわかりやすい例で説明しますと、例えば、とある授業の中で外部ツール内にあるテスト型の教材(解答を入力させる教材)をクラスの学生全員にテストとして解かせたとします。Moodle などの LMS には学生の成績を管理する機能がありますが、AGS を使うことで上記のテスト型の教材の解答結果( Tool 側)を LMS ( Platform 側)に学習データとして連動させることができます。つまり、学生Aさんは100点、学生Bさんは30点、学生Cさんは75点という風に外部ツールのテスト結果を Moodle 内の成績として自動で登録させることが可能となります。
これにより、教師はいちいち外部ツール側にログインして学生全員の点数を確認したり、csv でダウンロードしたりする必要がなくなり、教師や学校事務の方の管理工数が低減されます。またさらに、学生個々の学習習熟度や、クラス全体の平均点などをテストが終わった瞬間に LMS から知ることができるようになるのです。
AGS の活用法としてはテスト型の教材に限ったものではなく、デジタル教科書のような閲覧型の教材であっても、学生個々の教材の閲覧時間データを Platform に受け渡すことで、リモート学習下の出欠席データとして利用することなどもできます。

少しまとめますと、もちろん AGS はとても優秀な規格だと思いますが、なによりも Deep Linking の特定の教材へのピンポイントな遷移と、それを高いセキュリティを担保する SSO で実現できることが LTI1.3 の素晴らしいポイントだと考えております。

「 NRPS 」「 DL 」「 AGS 」の詳細は、#60 文系でも理解できる教育DX: LTI 1.3 編でわかりやすくまとめていますので、ご興味がありましたらこちらも是非一度覗いてみてください。

ここのところ、LTI 化対応の実績やご相談が益々増えてきております。「手がかりがなくどこから始めれば良いのかわからないので、ゼロから色々と教えて欲しい」といった手ぶら感覚のお声掛けも大歓迎です。

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田中 豊彦
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ひとつ前の投稿 ひとつ前の投稿 そのLMSの学習履歴、無駄にするのはもったいない。