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PMBOK 其の十: PMBOK第6版と第7版の違いとは

【戦国PM講座】
~ まんがで学ぶ PMBOK プロジェクトマネジメント標準 ~

戦国WEBディレクション講座

ミネアサヒの指導のもとOJTでWEBディレクションの経験を積んできた新之助は、一層のスキルアップを目指し、PMBOKに基づく「プロジェクトマネジメント標準」を学び始めた。価値実現システムガバナンス・システムなど、プロジェクトマネジメントの前提となる概念を学んできた新之助だが…

登場人物紹介

~ 「PMBOK®ガイド」第7版の変更点 ~

初回の接見に丸腰で挑むとは愚かなり!

ディレクターつや姫のワンポイントアドバイス

今日も殿を怒らせてしまいましたね。。。

今のプロジェクトにすぐ活用しよう思ってPMBOKガイド第7版を読み始めると、戸惑ってしまう方が多いのではないでしょうか。また、プロセスベースで書かれた第6版で学んだことのある方も、第7版の変貌ぶりに驚かれたことと思います。

第7版の特徴で大きく変わったポイントは、この2点です。
①「プロセスベース」から「原理・原則」へ
②「アウトプットを生成する」目的から「価値を実現する成果を生み出す」目的へ
どういうことか、詳しく見ていきましょう。

①「プロセスベース」から「原理・原則」へ

PMBOKガイド「第6版」の「プロジェクトマネジメント標準」は、立上げ・計画・実行・監視コントロールなど、プロジェクトの進行過程=プロセスをベースに記述されていました。ですから、Webディレクターならば、普段経験しているプロセスと同じ手順で、プロジェクトマネジメントを学ぶことができました。

しかし、第7版を出版する時点では、このアプローチでは対応できないケースが出てきたのです。

プロジェクトのスタイルは従来「ウォーターフォール型」が基本でした。水が流れるように、上流で決めたことを下流で実行していくスタイルで、建設工事や大規模システム開発等の体制に適しています。それが近年、中小規模のソフトウェア開発等において、反復的なアップデートを前提とする「アジャイル型」が導入されるようになりました。

これに対応するためPMBOK第6版では副読本として「アジャイル実務ガイド」が出版されました。しかし、2つの中間に位置するスタイルが生まれるなど、プロジェクトの形は多様化が進んでいます。そこで、スタイルごとに変わってしまう「プロセス」ではなく、どのプロジェクトにおいても共通する「原理・原則」をベースに記述することになった、というわけです。

すでに第6版まで学んだ方も、その内容が無駄になるわけではないのでご安心ください。第7版の序文には「過去の版のプロセスベース・アプローチとの整合を無効にする内容は一切存在しない」と記されています。

②「アウトプットを生成する」目的から「価値を実現する成果を生み出す」目的へ

PMBOKガイドでは、プロジェクトは次のように定義されています。

独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される、有期的な業務。
*『PMBOKガイド第7版』プロジェクトマネジメント標準 P4

実はこの定義は、第6版も第7版も同じなんです。ではなぜ目的が大きく変わっているのでしょうか。その理由は、プロジェクトマネジメントの「全体観」の変化にあります。

これまで学んだように、プロジェクトは単体で存在するのではなく、価値実現システムを構成する要素であり、ガバナンス・システムのもと、組織の一部として機能するものです。その他のビジネスや組織戦略などと切り離して考えることはできません。役割で見れば、プロジェクトは単独の「アウトプット」を生成するだけでなく、そのアウトプットが組織全体およびステークホルダーに「価値を実現する成果を生み出す」ことを求められているのです。

こうした全体観のもと、シンプルに言えば「いくらプロダクトを作ったとしても、それが組織にとって価値をもたらすものでなくては意味がない」というところへ目的が移行したのが第7版というわけです。

主に以上二つの理由から、第7版は「原理・原則」をベースとするものになりました。そのため、実務にすぐ取り入れにくいのは致し方なし…というところでしょう。しかし、それが現場で役立たないわけではありません。

実務でいくつかのプロジェクトを経験し、組織環境や各プロジェクトの規模・特性などに合わせて必要な要素を必要な形で取り入れる「テーラリング」を用いることで、学んだ知識を活かすことができます。

つい実践的なノウハウを求めてしまう気持ちはわかりますが、ここはじっくり原理・原則を学び、応用のできるプロジェクトマネージャーになりましょう!

Webディレクターの実務経験がない方には、実践編の『戦国Webディレクション講座』をお勧めします!

教訓:丸腰で臨むは負けフラグ!

(^^♪ 次回:肩書きとは違う? プロジェクトの「職務」とは?


【出典・参考文献】
プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版+プロジェクトマネジメント標準(一般社団法人 PMI 日本支部,2021.274p.)
A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK® Guide) – Seventh Edition and The Standard for Project Management (ENGLISH) By Project Management Institute Project Management Institute
Project Management Institute.
一般社団法人 PMI 日本支部
・プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第6版+プロジェクトマネジメント標準(一般社団法人 PMI 日本支部,2018.769p.)


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