NEWS ABOUT Solution WORKS TEAM BLOG お問い合わせ JP EN
edit 田中 豊彦

Edtechをゲームチェンジするキーワードは、「アクティブ×アダプティブ」

edtech_231018_1

文部科学省が欧米型のアクティブ・ラーニングを初めて提唱したのが2012年といわれています。そこから約10年が経ち、未だに日本では浸透しきれていないアクティブ・ラーニングですが、もはや少し古い考え方なのではないか…という声が聞こえてきています。アクティブ・ラーニングとは、どのようなものなのでしょうか?そして、今後はどのような教育メソッドが主流となるのでしょうか?

アクティブ・ラーニングとは

アクティブ・ラーニングとは、アメリカなどで以前より浸透している学びのスタイルのことです。学生は授業の前にしっかりと予習を行い、いざ授業の場では、全員が基本的なことを知っていることが大前提になっています。授業では知識を教わるのではなく、互いに思うところを議論しながら、その過程で深い理解や考える力を養っていくという学習メソッドです。一方で、日本では知識の伝達や注入を中心とした詰め込み型の学びが主流とされてきました。そして今では、社会に出たときに主体的に考え、創造的に活躍ができる欧米型人材の育成が急務であると考えられ、従来の詰め込み型の学びが疑問視されています。ここ10年あまり、文部科学省主導のもと、詰め込み型からアクティブ・ラーニングへの変換が行われ、実際にグループワークやディベート、体験型学習などの形で、「主体的・協同的に課題を発見し解決する力」の育成のために教育現場へアクティブ・ラーニングの取込みが試みられてきました。

では、これまで10年あまりを経ても、アクティブ・ラーニングがなかなか定着にまで至らなかったのは、何故なのでしょうか? その原因のひとつは、教科書や単元などのテキスト類が、アクティブ・ラーニングに適したものではなかったこととが挙げられ、そしてもうひとつは、導入にあたり学生のアクティブさを評価する基準が、「挙手」や「発言」という定量的に目に見えやすいもののみにフォーカスされてしまっていたことが挙げられています。これらの枠組みの課題を突破することができず、アクティブ・ラーニングの学びの本質までを浸透させることが難しかったようです。そうなると、アクティブ・ラーニングの考え方は日本では本当に定着できないのでしょうか? アクティブ・ラーニングの本質である「会話形式の中で、個々が能動的に参加し、互いに刺激し合いながら学びを深めていくこと」、これ自体は、今の日本に足りていないといわれる主体性や創造性を育んでいく為にも、ぜひとも取り入れたい教育手法なのではないかと個人的には思います。

アダプティブ・ラーニングとは

さて、ここで話が少し変わりますが、アクティブ・ラーニングと文字がよく似ていて、でもまったく違うアダプティブ・ラーニングという考え方も今注目を集めています。ほとんど間違い探しの領域ですね(笑) このアダプティブ・ラーニングとは、昨今流行りのEdtechの一種なのですが、日本語では「個別最適化学習」となります。文部科学省が推進しているGIGAスクール構想の中で、「個別最適な学び」というキーワードがありますが、このアダプティブ・ラーニング発想がこれにあたります。もう少しブレイクダウンしてみますと、学生ひとり一人の理解度や興味のあること、さらにはその子の性格までもを考慮し、まさにパーソナライズされた学習機会を創造するという発想になります。そして、このアダプティブ・ラーニングの実現にはICT技術の存在が不可欠といえます。
ここでまた話しをややこしくしてしまいますが、文部科学省は、「アクティブ・ラーニングの実現のために、アダプティブ・ラーニングの浸透が必要」と考えているようです。つまり、アクティブ・ラーニングが達成すべき目的であり、アダプティブ・ラーニングはそれを実現する為の打ち手ということになるのでしょうか。この2つがどのように連動していけるのかについては、少し疑問が残ります。

lti_230607_1

アダプティブ・ラーニングとは、個々の学生に適した学びを提供することですが、その適した学びが何かを知るためには、学習履歴データによる学びの分析が必要となります。ある学生の理解度はどれぐらいの状態にあるのかであったり、どこが苦手で何に興味関心を持っているのかなど、むしろ学生本人が自覚できていないような視点も含めて、より深くまで理解・分析を行う。そうすることで、その学生個人に対して次の学びへの最適な一手が提供できるようになるのです。そして、これをICTなどを駆使して実現していくことが、アダプティブ・ラーニングであるといえます。また、同様の内容として、大学などの研究機関では、ラーニング・アナリティクス(LA)という言い方で、教育ビッグデータと呼ばれる学習履歴データをいろいろな角度から分析して、学びの改善や効率化に活かしていくという研究が盛んに行われています。まさに、これからの教育には、学習履歴データの利活用は欠かせないテーマであり、それらのデータは日本の未来をつくるための貴重な資産といえるのです。

これからの教育スタンダードとは

これからの教育界が目指すべき方向性としては、『学習履歴データの分析から「学びの個別最適化」を行いつつ、他方で「主体的・対話的で深い学び」も実現していくこと』となるのでしょうか。前者は個人単位のパーソナル視点で、後者は協働学習のようなソーシャル発想な視点のように見えます。一見つながっていないように見えるアダプティブ・ラーニングとアクティブ・ラーニングですが、きっと誰かのブレイクスルーによってすべてが有機的につながり、この両輪が将来の教育スタンダードになっていくことになるのでしょう。

実際に弊社が開発に参画させていただいているプロジェクトでも、学習履歴データの利活用をどうしていくべきかというテーマは大きな議題になっております。そして、こちらを読んでいただいている皆さまも、学習履歴データの利活用という課題感はごく身近なものとしてお持ちなのではないでしょうか。

弊社は、大学の研究や国が推進するデジタル事業など、未来の教育スタンダードを創っていくような半歩先行くプロジェクトにも多数関わらせていただいており、まさに日進月歩の刺激を肌で体感させていただいております。

教育分野のシステムに関する支援が必要な場合は、こちらよりお気軽にご連絡をいただけましたら幸いです。

田中 豊彦
ひとつ前の投稿 ひとつ前の投稿
ひとつ前の投稿 ひとつ前の投稿 LTI 漬けのディレクターが思う、LTI1.3 考。