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edit 田中 豊彦

オープンバッジ3.0が開く新たな扉

皆さんは、最近注目を集めているオープンバッジというものをご存じでしょうか?

今年(2024年)5月に、オープンバッジ3.0という新バージョンの標準規格が発表されたことで、以前にも増して注目が集まっています。オープンバッジは、大学などの高等教育や、社会人のスキルアップ教育などのカリキュラムにおける修了証明として使われるものになります。e-learningなどの教育のデジタル化と歩みを同じくして、デジタル上で修了証明を行うものとして1EdTechが国際標準規格として策定しています。1EdTechといえば、LMSと学習ツールをシームレスにつなぐLTI(エルティーアイ)や、校務系や学習系システムで簡単に名簿連携させるOneRosterの国際標準規格が馴染み深いところですが、実はオープンバッジの規格も1EdTechが策定しているものになります。

先日、1EdTech Japan主催のカンファレンスが開催されましたが、オープンバッジやマイクロクレデンシャルをテーマとしたセッションが多かった印象です。私自身も、とても興味があるテーマでしたのでいくつかのセッションに参加させていただきました。そこで話されていた内容をシェアさせていただきます。

 

マイクロクレデンシャルの浸透

大学などの高等教育において、学士や修士のような数年かけて取得する総合パッケージ化された学位プログラムの学習歴の証明のことをマクロクレデンシャルと呼びますが、昨今のIT化の急加速による学習テーマの多様化や専門化の流れに伴って、学びの内容や学習期間もより細分化される必要性がでてきています。このように細分化された履修プログラム単位ごとに個別に学習歴の証明を行うことをマイクロクレデンシャルと呼びます。

この細分化、つまりは専門化の流れは高等教育の現場に限ることではなく、社会人のスキル習得の分野においても同様の傾向があります。例えば、エンジニア向けの研修を例にするならば、サーバー構築全般に渡るスキルを習得するような研修に対し、昨今流行りのAWSだけに特化されたスキルアップ認定などは、まさにマイクロクレデンシャルと言えるのではないでしょうか。

 

オープンバッジとは

これらの高度且つ細分化された学習歴を証明していく際に重宝されるのが、オープンバッジだと言われています。オープンバッジの取得者にとっては、学習意欲の向上やスキルの見える化ができるメリットがある一方、ビジネスの現場においては、オープンバッジの取得の有無を人材マッチングの判断材料にしている企業もあるようです。実際に、アジアでは約700の組織(学校や企業)がオープンバッジをすでに採用しており、約1万種類のオープンバッジが発行されています。これは1日にすると約50個が発行されている計算となります。特に韓国で浸透が進んでいて大学の約半数がオープンバッジを採用しているとのことです。日本でも文部科学省が全小学生にオープンバッジを保存・管理するウォレットを持たせるという検討を進めているという話しも耳にします。

オープンバッジは、学位証明書のような紙で発行されるものではなく、デジタル上で発行される証明になりますが、その実態は画像ファイルになります。履歴書などに貼付したり、SNSやメールなどで共有することも簡単で、紙に比べて証明の提示が圧倒的にしやすいというメリットがあります。しかも、単純な画像という訳ではなく、その画像ファイル内にJSON-LD形式のメタデータとして証明発行者や証明取得者、その取得した内容や学習成果までもデータとして組み込むことができます。実際に画像ファイルをメモ帳などのテキストエディタにドラッグすると、JSONのコードが表示されます。これはひとつ前のバージョンであるオープンバッジ2.0の頃から実装されている仕様になります。

つまり、単に提示しやすいというだけでなく、どんなスキルを習得したのかや、本当に信用できる証明書なのかなどが画像の裏側に記載された情報を読み取ることで、第三者からでも一目瞭然になるということです。

バージョン2.0から3.0への進化

オープンバッジ2.0は前述のように画像ファイルの裏側に情報を保持する機能性がありながらも、誰にでも開示する公開前提の仕様になっていました。特に暗号化などの配慮もされていませんでしたし、もちろん個人情報を保護をするという概念もありませんでした。一方で、オープンバッジ3.0からは上記のような高い公開性や使い勝手の良さの面だけでなく、ブロックチェーン技術の採用により偽造や改ざんができなくなり、信頼性が圧倒的に強化されました。加えて、公開鍵・秘密鍵による暗号化も3.0から採用されましたので、ブロックチェーンと暗号化の両輪で、真正性や完全性が保証されている高いセキュリティ性が実現されました。また、2.0のようにあけっぴろげに誰にでも公開するのではなく、公開したい内容や公開したい相手先を限定するプライバシー保護の制御も可能とのことです。

今後、ますますマイクロクレデンシャル化や教育DX化の加速が予想されるなかで、オープンバッジは当たり前のように浸透していくものとなりそうです。実際に弊社の周りでも、既にオープンバッジを採用したり、これから前向きに検討するという声が聞こえてきている状況で、かなり身近な規格となりつつあります。

このようなオープンバッジやLTIなどの技術規格に準拠したシステム開発については、弊社の得意とする分野とはなりますが、これらは社風として新しい技術の取得に前のめりな文化が起点となっていると言えます。よって、ご評価をいただいている教育DXの分野に限らずに、業務DXやWEBアプリ開発、CMS構築などなどについて、何かお困りごとがありましたらお気軽にご連絡いただけますと幸いです。

田中 豊彦
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